じぃじは、溝掃除に徴収され、朝から軽トラで走り回っている。
この時期、田植えを前に、村中総出の大掃除大作戦が行われる。
太朗とママは、いつもより少し早く目が覚めた。
昨晩、太朗が捕まえたホタルが眠り始めたことだろう。
太郎は慎重に瓶を抱えて、暗いところへ動かした。
ごはんに目玉焼きをのっけて、しょうゆをかける。
太朗の口に運べば、重たい唇が上下にひらく。
太朗は、朝ごはんを自分で食べたためしがない。
それから、朝には恒例のくしゃみを20回ばかり済ませて、
太朗は、率先して歯を磨いた。
まだ9時過ぎだというのに、
太陽のボルテージが一気にあがってくる。
肌に感じる夏の入り口。
ママと太朗は、自転車にのって、じぃじを探しに出かけた。
一気に上達した自転車を、太郎は気持ちよさそうに蛇行させている。
ママはそれを邪魔しないように、わざとゆっくりとこぐ。
麦わら帽子、てぬぐいをくびにかけたおじさんが、
「ぼく、これやろ。」
差し出されたのは大きな川がにだった。
ママに眠る野生の血が騒ぐ。
「ママ、入れ物とってくる!太朗、まってて。」
太朗よりも子供らしく、走り出すママ。
時折、太郎はママより大人である。
とても冷静で、涼し気で、的確な判断をして、ママを落ち着かせてくれる。
川がにをバケツに入れると、とたんに冷静になるママ。
・・もらってどうするんだろ。
もらった動機が不明になってくる。
大人は不順だ。
太朗は、「でけー!」「ばぁば、見て!!」と子供らしく騒いでいる。
ママと太朗は、ふたりいるからちょうどよい。
太朗はそのうち一人で十分足りるようになるだろう。
ママは、そのうちおいぼれて、全く一人でやっていけなくなるかもしれない。
物理的にしかたがないこともあるだろう。
だけど、ママは太朗を困らせたくはないんだ。
だから、今できることは、
「こんなちっぽけなことで困るか!!たいしたことないし~。」
って思えるような、
強くて寛大な太朗を育てることなんだ。
くたびれたじぃじが戻ってきた。
「野イチゴがいっぱいなっとるぞ。後で連れて行ったろ。」
なぁんだ、野生はじぃじ譲りだったのか。
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2018年6月3日(土)太朗の誕生月
2018年6月3日