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2018年6月3日(土)太朗の誕生月

じぃじは、溝掃除に徴収され、朝から軽トラで走り回っている。
この時期、田植えを前に、村中総出の大掃除大作戦が行われる。
太朗とママは、いつもより少し早く目が覚めた。

昨晩、太朗が捕まえたホタルが眠り始めたことだろう。
太郎は慎重に瓶を抱えて、暗いところへ動かした。


ごはんに目玉焼きをのっけて、しょうゆをかける。
太朗の口に運べば、重たい唇が上下にひらく。
太朗は、朝ごはんを自分で食べたためしがない。
それから、朝には恒例のくしゃみを20回ばかり済ませて、
太朗は、率先して歯を磨いた。

まだ9時過ぎだというのに、
太陽のボルテージが一気にあがってくる。
肌に感じる夏の入り口。

ママと太朗は、自転車にのって、じぃじを探しに出かけた。
一気に上達した自転車を、太郎は気持ちよさそうに蛇行させている。
ママはそれを邪魔しないように、わざとゆっくりとこぐ。

麦わら帽子、てぬぐいをくびにかけたおじさんが、
「ぼく、これやろ。」
差し出されたのは大きな川がにだった。
ママに眠る野生の血が騒ぐ。
「ママ、入れ物とってくる!太朗、まってて。」
太朗よりも子供らしく、走り出すママ。

時折、太郎はママより大人である。
とても冷静で、涼し気で、的確な判断をして、ママを落ち着かせてくれる。

川がにをバケツに入れると、とたんに冷静になるママ。
・・もらってどうするんだろ。
もらった動機が不明になってくる。
大人は不順だ。

太朗は、「でけー!」「ばぁば、見て!!」と子供らしく騒いでいる。

ママと太朗は、ふたりいるからちょうどよい。
太朗はそのうち一人で十分足りるようになるだろう。
ママは、そのうちおいぼれて、全く一人でやっていけなくなるかもしれない。
物理的にしかたがないこともあるだろう。
だけど、ママは太朗を困らせたくはないんだ。
だから、今できることは、
「こんなちっぽけなことで困るか!!たいしたことないし~。」
って思えるような、
強くて寛大な太朗を育てることなんだ。


くたびれたじぃじが戻ってきた。
「野イチゴがいっぱいなっとるぞ。後で連れて行ったろ。」

なぁんだ、野生はじぃじ譲りだったのか。























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