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2018年2月8日(木)判決主文

判決の言い渡しの翌日である。
メールの受信箱を開くと、弁護士の先生からメールが届いていた。
マラソンを走り終えた時のように、鼓動が早くなる。
呼吸が乱れる。心臓が跳ねる。

正しい判決をもらっても今だ万歳ができない理由。
なぜかというと、判決文の中に「主人の偽造」を確認しなければいけないからだ。
もし裁判官が、「養子縁組を提出する直前に、原告(私)に提出の許可を得ていないため、その養子縁組は無効である。」
とでも結論付けたとすれば、私が訴えて来た「偽造された。」という訴えから話がそれてしまうのである。
そうなればこの後、刑事告訴するとしても犯行を特定できない可能性があるからだ。
犯行を特定できなければ不起訴となり、偽造犯罪はうやむやになってしまう。

だからこそ、判決文の内容が全てを握っている。

姿勢を正してパソコンに向き合った。
メールを開くとPDFファイルがついていた。
「しっかりと理論的に書かれています。」
メール文を速読しながらすぐさまファイルを開封する。

主文、50ページもに及ぶそれは長い文章だった。
そこには私が訴えた「養子縁組の無効」を認めることへの理由(判断理由)が述べられていた。
(原告=私)

被告の供述は客観的な裏付けを欠く点、客観的事実と整合しない点、不自然な点、具体性及び迫真性に欠ける点、不合理な変遷がある点等に照らして信用することはできず、他に原告が署名押印したことを認めるに足りる的確な証拠はなく、被告らの主張は採用することはできない。

供述を後退させながら、部分的にむしろ詳細になっており、記憶の保持において一貫しないものとなっており、真実を語る供述としては違和感がある。

主張を変遷させながら、具体的に特定しており、上記の通り被告は時間まで具体的に特定した供述をしながら、特定できた理由について、何ら説明していない点においても、被告の供述は不自然である。

原告から親権を失わせ、被告息子の親権を理由に、原告に服従を求めるに等しいものであって、後期のとおり、被告らが本件縁組届を偽造した動機にも通ずる主張と言わざるを得ない。

(養子縁組届の筆跡とそれを作成するために使われた申込書の筆跡について)

同一人が上記のように筆記条件が異なる中で記載したものとは、およそ考え難い。
同一人が自然に記載した文字というには違和感を禁じ得ない。
インクのたまりがないことも自然に筆記されたものでないことをうかがわせる。
むしろ、何者かによって本件入居者申込書の記載をなぞって記載されたものと十分にうかがわれうものと言わざる得ない。

(被告によって偽造されたことがうかがわれる点について)

被告は特別代理人選任申立事件につき、原告の事前の承諾を得ることなく、被告母をして原告の署名押印を行わせており
事後的にも明示的に代筆がなされたことを説明していないのであり被告は、原告の署名押印を、その承諾なく作出したことがある。
太朗名義の不動産を管理していた被告にとって、太朗の親権の帰属は重大な問題であったことがうかがわれ、被告太朗の親権者を原告と指定されない方法として養子縁組は極めて有効な手段であることからすれば、被告には本件養子縁組を偽造する同期があったと認められる。
また被告や被告父と母は、養子縁組届を提出することを原告に告げず、また市から届いた受理通知を原告に渡さず、また、届いたことも伝えなかった。このように養子縁組届の提出を、原告に秘密裡に行っており、係る行動は、本件養子縁組を偽造した者の行動として矛盾しない。

被告は本件養子縁組届母欄を、入居者申込書の記載をなぞり、署名押印をして偽造することが可能であり、偽造の動機もあり、係る動機に整合する行動をとり、かつ偽造した者の行動として矛盾しない行動に出ており、また、原告の署名押印を事前の承諾なく作出したこともあることからすれば、上記偽造をおこなったのは、被告であることが十分うかがわれる。

(筆跡の科学的鑑定について)
複数の鑑定士の間でも採用する手法が異なる点において、疑念の余地がある上、本件において立証すべきは、なぞったものではないことであり、係る点につき、科学的に確立された鑑定手法があるとも認められない。

(最後に)

原告の署名は被告がなぞって偽造したものとうかがわれることは前記のとおりであるが、前期特定のとおり、被告は本件鑑定の際に、
鑑定士に対して、偽造に用いた本件入居申込書を提出しており、偽造をした者の行動としては、いささか理解に苦しむところはなくないが、
少なくとも、原告が養子縁組届に署名押印したことは認められないとする上記判断を左右するものではない。


私は、主文にラインを引きながら夢中で読んだ。
うれしくてたまらない部分には、「ありがとうございます。」と書き込んだ。
誰に読まれるわけでもないけれど、私の気持ちを表現せずにはいられなかったから。

あんなに物静かで淡々とした裁判官が、
これほどまでに、しっかりと、確かに見ていてくれたことや、
正しく裁いてくださったことに、ただただ感謝しかない。
やっと、やっと自分の人権や存在感を認識できた瞬間だったのだと思う。

私は恍惚として、天井を見上げる。
事務所の低い天井だが、そこに天国がみえた。

判決文が出て、数日たつが、
あれを読んだときから、どこかの筋肉が緩んだようだ。
プール後のだるさのような、
心地よい疲労感と脱力感に浸っている。

裁判が始まって2年と4か月、私は喪に服した。
何を見ても景色はモノクロだった。

今、期待も込めてかすかに見え始めた外(色)の世界。
いつか私も、
彩りを取り戻せますように。


















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