夜のレッスン、久しぶりに太郎がついてきた。
最近では、いとこと遊ぶ方が優先されて、
「おうち、おるわ。ママ、行ってらっしゃい」とあっさり送り出してくれていた。
そのおかげで、夕飯を作り、太郎に食べさせて自分も食べてからレッスンに行く、
という秒刻みの慌しさが緩和されていた。
食べさせる口が一つ減るとどんなに時間が節約されることか。
だから私は昼御飯を食べないのかもしれない。
太郎がついていくと言う。
慌夕飯を半ば済ませ、咀嚼しながら戸口をでた。
すっかり真っ暗である。
ヨガのレッスンは月に3回ほど。
なんの宣伝もしていないが、いつも顔なじみの生徒さんが来てくれる。
太郎は受付係。スタンプを押して、チケットをもらう。
一歳からしているんだもの、そんじゃそこらのアルバイトより商売上手だ。
受付が済むと、マットの周りを走り回ったり、生徒さんの背中に登って遊んだり。
ママが先生である特権を味わっているかのようだ。
私自身も、このレッスンという場で、太郎の存在が許される空気をつくるため、充分な時間をかけてきた。
人間はほんの少し許し合うだけで、共に存在し続けることができる。
私には完全排除という選択はできない。
レッスンが始まると太郎は、迎えに来たばあばに連れられて帰っていく。
口パクで「ママ!バイバイ!」と言っている。
ママは笑顔で手を振る。
太郎は「ママ、かわいい」と言ってから立ち上がった。
レッスンが終わる。
肩の力が抜けた人たちが、良い意味で無防備な会話を残してくれる。
「先生、今月、なんかご主人のターゲット、かわった?」
彼女によれば、私への執着が薄れて、別に移ったのではないかと言うのだ。
彼女は不思議にもシックスセンスがあり、会うたびにメッセージをくれる。
私は首を傾げた。思い当たる節がない。
私は答えた。
「彼女でも出来たら、気持ちがそっちに向いて、私や太郎への攻撃や減るんでしょうけど。どうなんでしょう。」
私は生徒さんに、自分のプライベートを話すことはない。
だけど、彼女だけには見透かされていた。
まるで私の事件を知っているかのように、「大丈夫?先生、すごく辛そう。」と話かけてもらったのが始まりである。
私は隠さずにはいられなかった。
その時から彼女は私を心配してくれている。
そしてたまに、レッスンの帰り際に、意味深なメッセージを残してくれるのだ。
執着が薄れている、、
ターゲットがかわる、、
ピンとこない。
わからない。
ただ、また何かが、
知らないところで
始まってしまったのかもしれない。
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2017年11月14日(火)預言者
2017年11月14日