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2017年11月14日(火)預言者

夜のレッスン、久しぶりに太郎がついてきた。
最近では、いとこと遊ぶ方が優先されて、
「おうち、おるわ。ママ、行ってらっしゃい」とあっさり送り出してくれていた。
そのおかげで、夕飯を作り、太郎に食べさせて自分も食べてからレッスンに行く、
という秒刻みの慌しさが緩和されていた。
食べさせる口が一つ減るとどんなに時間が節約されることか。
だから私は昼御飯を食べないのかもしれない。

太郎がついていくと言う。
慌夕飯を半ば済ませ、咀嚼しながら戸口をでた。
すっかり真っ暗である。

ヨガのレッスンは月に3回ほど。
なんの宣伝もしていないが、いつも顔なじみの生徒さんが来てくれる。
太郎は受付係。スタンプを押して、チケットをもらう。
一歳からしているんだもの、そんじゃそこらのアルバイトより商売上手だ。

受付が済むと、マットの周りを走り回ったり、生徒さんの背中に登って遊んだり。
ママが先生である特権を味わっているかのようだ。
私自身も、このレッスンという場で、太郎の存在が許される空気をつくるため、充分な時間をかけてきた。

人間はほんの少し許し合うだけで、共に存在し続けることができる。
私には完全排除という選択はできない。

レッスンが始まると太郎は、迎えに来たばあばに連れられて帰っていく。
口パクで「ママ!バイバイ!」と言っている。
ママは笑顔で手を振る。
太郎は「ママ、かわいい」と言ってから立ち上がった。

レッスンが終わる。
肩の力が抜けた人たちが、良い意味で無防備な会話を残してくれる。
「先生、今月、なんかご主人のターゲット、かわった?」
彼女によれば、私への執着が薄れて、別に移ったのではないかと言うのだ。
彼女は不思議にもシックスセンスがあり、会うたびにメッセージをくれる。

私は首を傾げた。思い当たる節がない。
私は答えた。
「彼女でも出来たら、気持ちがそっちに向いて、私や太郎への攻撃や減るんでしょうけど。どうなんでしょう。」

私は生徒さんに、自分のプライベートを話すことはない。
だけど、彼女だけには見透かされていた。
まるで私の事件を知っているかのように、「大丈夫?先生、すごく辛そう。」と話かけてもらったのが始まりである。
私は隠さずにはいられなかった。
その時から彼女は私を心配してくれている。
そしてたまに、レッスンの帰り際に、意味深なメッセージを残してくれるのだ。


執着が薄れている、、
ターゲットがかわる、、

ピンとこない。
わからない。
ただ、また何かが、
知らないところで
始まってしまったのかもしれない。

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