新快速は海側のシートに。窓枠に肘をついて外を眺める。隣のスーツ姿の男性からカレーの匂いがする。朝ごはんはカレーだったのかと、見知らぬ人の生活感を感じる。しばらく揺れて、ふと目線を落とすとスーツの男性はサンスクリット語でＳＮＳを打っていた。

仕事が終わり、帰りの新快速は大雨の影響で２５分も遅れた。関西の交通機関に大きな影響が出ているみたいだ。園のお迎えの時間が迫る。きっと世間の母親は、何十人、何百人、何千人が今、お迎えを心配しているだろう。

スポーツカーに飛び乗る勢いで保育園へ向かう。園の帰り際、まゆみ先生が、「ラストスパートをかけて、大人のお箸がもてるように練習しようね。」と太郎をはげました。太郎は素直に「うん。」とうなずく。

この１～２週間くらいだろうか。太郎が自立してきたような感覚がある。これまでは、ママに付属している部分が多かった。それがここ数日のうちに、ママからぽろりと外れて、新しい世界に遊びに出かける準備を始めたようだ。家族のメンバーの「一」に数えられるようになった。別の言い方をすると、太郎なしでは家族が成り立たないということ。支え（柱）の一本になっているような感じだ。