未分類

2017年9月6日(水) 優しさのシャワー

「事務所では主人のつきまといが心配なので」と、税務署が配慮し、税務署内での話し合いとなった。
早めに駐車場についたが、周りが気になって仕方ない。
主人の車はないかときょろきょろとあたりを見渡す。
後から来たばぁばも同じように、逃げ道を確保して駐車スペースを選んでいる。

会計士さんが歩いてやってきた。
片手にはいつも使い古した紙袋を持っている。
その紙袋には私の申告書類が入っているのだろう。
ノーネクタイ、白いシャツの腕をまくって、ひょこひょこと歩く色黒のおじいさん。
バシッとスーツが決まっていることはないけれど、私にとってはスーパーマンなのだ。
格好良さとは、目で見るものではない。
感じるものだと思う。

税務署の職員を尋ねて室内に入り、通された部屋、折り畳み椅子に腰かける。
職員さんは、修正申告の案を取り出し説明を始める。
私の傍らには会計士さんが背を丸めて静かに聞いている。

おおよそ説明が済み、私は深く納得した。会計士さんもばぁばも同じ様子だ。
上司の一人が私の目を深くのぞき込むように話し始める。
「ご主人の一件もあるし、今の事務所を自宅に戻して、体系も会社にしたら良いと思うけどね。いや、単なるアドバイスよ。」

・・人のやさしさ、思いやりが浸透する。
ありがたいな、うれしいな、よかったな、+++の感情がこみあげた。
会計士さんは、「ほら、会社は自分のタイミングでええんやで。自分とこの体制が整ったら会社にしたらえんや。」
「そら、税率も少なくなるで。でも経理をしてくれる人がいるからな。そこを育ててからやなぁ。」

子供のころ、熱を出したときはお母さんが特別優しかった。
おばあちゃんまで「缶詰のみかんは?プリンは?何か食べたいものは?」と尋ねてくれた。
愛されているんだな、心配されているんだな、って、熱のだるさの中で体感した。風邪ひきの特権だった。

今、ちょとだけそんな感じ。
そのやさしさに慣れなくて、くすぐったいような、私はどうしてよいかわからない。

これまで主人やその両親にずっといじめられて、つらい思いばかりして、、、助けを求めた先に断られたりする。
そんな中で私は、くすんでいったんだ。

この人たちの思いやりは私の疑いの心を漂泊してくれた。

「これ、主人がフェイスブックで送り付けとんですか?」
「査察、マルサ、億単位の脱税って、完全に想像の世界やな。違うからね。何が目的なんやろね。」
「ヘドが出るなぁ。」

職員が口々につぶやいた。
優しさのシャワーで、私の心に着いた墨が落ちていくようだった。













コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA