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2017年9月1日(金) 検証 真実は誰

裁判所での検証。
いよいよこの日が来た。
養子縁組無効の訴えを提訴してから10月で2年を迎える。
裁判の戦いはゴールが見えない。
期待は一握りも持つべきではない。
今日の日を誠実に生きるしかない。
答弁に、反論に、証拠に、代理人弁護士に、裁判官に、まっすぐ答える。
これだけである。

そして今日。
私が書いたものではない私の署名を、本当に私が書いた署名と見比べ、重ね合わせるという実験が行われる。
養子縁組届に書かれた私の署名は、アパマンショップの申込書に書いた署名と99%同一であった。
残りの1%は、アパマンの署名を下に敷き、上に養子縁組届を乗せた状態で署名をなぞったとき、点や角に多少のずれが出ているからである。
2つの署名が99%同一ということはありえないことである。すなわち、透写をして偽造されたものということになる。
裁判所の一室、シャーカッセンと言われる透写版に紙を置き、下からライトで照らす。
裁判官が土など触ったことのないようなきれいな指で、2枚を上にしたり下にしたり、重ね合わせを繰り返す。
書記官が裁判官の動きに合わせて写真を撮る。裁判所には良いカメラがないというので私が持参したカメラである。
書記官が撮り、相手方代理人(弁護士)が自分のカメラで撮る。
その繰り返しだ。何パターン撮影しただろうか。

代理人の傍らには主人がいる。
自分が偽造したであろう文字を6人の人間が取り囲んで、神妙な面持ちでそれを見ている。
その時彼は何を思うのだろう。
私が犯人であれば居ても立っても居られない、逃げ出したい気持ちだろうと思う。
主人は、皆の作業をのぞき込むようなしぐさをしたり、
「部屋の電気も消してみたら良いんじゃないですか?」などど、部外者のごとくアドバイスをしていた。
あきれ返るのを180度返して元に戻ってきそうな気持ちさえする。
天変地異である。
私は一切、主人を見ない。
視界にいれることを私の眼が許さない。

作業は手際よく進み、甲32号証と養子縁組届の原本の重ね合わせの段階へ来た。
甲32号証というのは、私が全く別の折に署名した賃貸契約書(アパマンではない)の署名である。
別の折に書いた同一人物の署名が、養子縁組届に書かれた署名とどれだけ異なるかという実験である。

裁判官が「では32号証の原本を出してください。」私の代理人に声をかけた。
代理人弁護士が一瞬固まる。何かやばい予感だ。
弁護士は「えーっと、もってない?」私の方にふってきた。
私はそんな実験をすることを聞いていないし、準備をして来いともいわれていない。
「いや、今日、私は持っていません。」そう答えた。
弁護士は焦った様子で、なんとなく私が忘れた体裁にして、裁判官に謝罪した。
裁判官はほんの少しいらだった様子で「では、次回期日を近いうちに決めましょう。」と言った。

片づけをしようというとき、弁護士が「裁判官、今日は体調、大丈夫ですか?」と機嫌を取るように声をかけた。
裁判官は、「実は・・・今しがた、父ががんの末期だと連絡がきて、まいってしまって・・」語尾が弱かった。
裁判官のこんな人間らしい瞬間を見たことがなかった。
それだけに、私は胸がざわざわした。
親近感さえ沸いた。

退室する裁判官に深々と頭を下げた。
黙とうのような気持だった。
何もかける言葉はないし、かけるべきでもない。

弁護士は退室した後、「ごめんごめん、まさか32号証の重ね合わせするなんて。」と苦笑いをした。

私はこらえて言った。「裁判官の事情が事情だし、やり直しになってよかったかもしれません。いろんな事情がありますね」
心の中では、私のせいにしたことへの借りをつけてやろうと、少し念を押したかったからだ。



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